■過去6年間、ドライバー年齢別で65歳以上が67%
国土交通省などによると、全国の高速道で確認された逆走事案は2013年が143件▽14年が212件▽15年が259件−−と増加傾向。今年も6月末までの半年間で119件あり、うち28件が事故につながった。
過去6年間(2011年〜16年6月)の逆走事案は1153件で、ドライバーの年齢別では、65歳以上が67%▽30〜64歳が25%▽30歳未満が8%だった。
一方、ドライバーが認知症とみられるのは8%で、精神障害(5%)や飲酒(2%)を合わせても2割以下。8割は、警察官らと正常な意思疎通ができたという。
発生場所はインターチェンジ(IC)・ジャンクション(JCT)が53%で最多。次いで本線上が20%▽サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)は7%だった。
逆走のパターンは、一般道から出口側に進入▽誘導路から合流地点で反対方向に走行▽SA・PAで入り口から出て逆走−−など。目的のICを誤って通過し、引き返すためにUターンするケースもある。
■国交省は「20年までに事故ゼロ」掲げて対策
逆走は死亡や多重衝突など重大事故につながりかねず、国交省は「2020年までに逆走事故ゼロ」を掲げて対策を進めている。カーナビや車載カメラで逆走を知らせるシステムなどの開発を検討。11月から対策技術を公募しており、18年度からの実用化を目指している。高速道の各管理会社も、誘導の標識を大きく表示したり、逆走を防ぐポールを設置したりするなどの対応を進めている。国交省の担当者は「逆走は高齢者や認知症の人に限った問題ではない。誰もが細心の注意を払ってほしい」と呼び掛けている。【原田悠自】
◇事故を起こした63歳男性「なぜ、まさか自分が…」
今年8月に兵庫県・淡路島で逆走事故を起こした男性(63)が毎日新聞の取材に応じ、「なぜ走り慣れた道で逆走したのか、今も分からない」と苦悩する心境を語った。
事故は8月25日午後7時40分ごろ発生。兵庫県洲本市の神戸淡路鳴門自動車道・下り線で、逆走した男性の軽乗用車が乗用車と正面衝突して横転。乗用車の後続のトラックなど計5台が絡む事故で、男性を含む5人が重軽傷を負った。
男性は肋骨(ろっこつ)が20本近く折れ、意識が戻ったのは数日後。逆走したことを看護師に聞かされたが、事故直前の記憶がなく「まさか自分が」と信じられなかったという。
当日は趣味のスキューバダイビングのため、奈良県の自宅から香川県に移動中。認知症の症状はなく、元建設業で運転歴は40年以上。洲本市内で働いた経験もあり、何度も通った道だった。事故につながったとみられるのが、現場から約5キロ南にあるパーキングエリア(PA)。休憩した記憶があり、入り口から出て逆走した可能性があるという。
それまで逆走事故のニュースを見ても「自分には関係ない」と思っていた。「何も思い出せず、被害者に申し訳ない」。男性は、後遺症で箸も持てない右手をさすった。【原田悠自】
◇今年起きた高速道路での主な逆走事故
4月28日 富山県南砺市で逆走した軽トラックと乗用車が正面衝突。軽トラックの男性(90)が死亡、乗用車の運転手が軽傷
7月 7日 岡山県倉敷市で逆走した乗用車と大型トラックが正面衝突し、乗用車の女性(69)が死亡
7月19日 愛知県小牧市で逆走した乗用車が大型トラックと正面衝突。乗用車の男性(46)が死亡、同乗の家族が軽傷
10月21日 秋田県由利本荘市で逆走した軽乗用車と大型トラックが衝突。軽乗用車に乗っていた男女3人(76〜82歳)が死亡
11月29日 兵庫県淡路市で逆走した軽乗用車が大型トラックと正面衝突するなど計3台が絡む事故。軽乗用車の男性(22)が死亡、トラックの男性ら2人が軽傷